2007-06-28

[書評] 琵琶盲僧永田法順 / 川野楠己

最後の琵琶盲僧、永田法順のドキュメンタリー本。彼の出生から出家、修行、師匠の死、結婚と一生を追いかけている。周囲の人々、特に御婦人の描写もある。

他に盲僧琵琶という消えつつある歴史も解説。この説明がなななかで、伝説や口伝なども収録していて、学術的な説明にしあがっている。日本の伝統音楽の一つに、盲僧の活躍があったことは確実なのだろう。

日本音楽の根強い流れの一つに仏教音楽の影響があるが、それも仏教が声明などを各地の寺で演じていたことの他に、琵琶法師が各地で平曲などを披露したのもあるのだろう。そうした芸能としての放浪の坊主が、虚無僧尺八は勿論、あるいは説経節などの芸能にもつながっているのか。

日本の芸能を考える人にはぜひ読んで欲しいし、なにより彼のサウンドを聴いて欲しい。日向の土と風を感じることと思う。強烈なブルーズだ。祈りと歌の本質がそこにはある。

興味は尽きない。ただ、その盲僧琵琶の流れは尽きてしまうのだが。