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話術というほどではないのだが、物の言い方について、偉そうに書いてみる。
1) まず褒める。褒めることはおだてることではない。相手の現状を評価することである。相手の現状を認めることなしに、交渉は不可能である。例えば、あなたの車を見て「いやー、なかなか素敵なお車ですね。でも、もっといい車があるんですよ」と話す人間と、「いやー、ひどい車ですね。ですから、もっといい車があるんですよ」と話す人間のどちらから車を買うかを考えればよい。
2) 話を最後まで聞く。大概の人は人の話を最後まで聞かない。ええ、絶対に聞いていない。そして話の途中で「それってさ、こういうことでしょ」とのたまう。途中で話を切られて、私の言いたいことが当たっていたことは記憶にない。相手の話を最後まで聞き抜くことが必要である。私も若い頃にこれで失敗をした。話が長くて暇で仕方ないなら、相手の意見をどうやったらより簡潔に表現できるか考えればよい。ただし、間違っても、話を聞きながら自分の意見を練ってはいけない。そうした、気配は読まれるものである。
3) 直感で意見をしない。人の話を聞くと、ついつい「それなら、こうすればいいじゃん」などと助言や批評をしたくなるものである。これは間違いである。はっきり言って、他人の助言や批評なんて何の役にも立たないのである。これも私はよく間違えた。相手がいくら疑問形で話していても「それは、大変ですね」「難しいですよね」と答えるところである。本当に相手を思っているなら行動で示すか、後々別の機会に「わざわざ」助言をするとよい。
4) 逆説で応じない。人が話した後に「でも」で会話を始める人は確実に損をしている。あいては無意識的にしろ意識的にしろ、その後に自分の意見を否定する言葉が続くと思って身構えてしまう。「そうですね」や「確かに」「なるほど」などから話をついでゆくとスムーズになる。
「パパ! 見てみて、英語の成績よかったでしょ」といわれた後に「でも数学はだめだねえ」という父親と「そうだね、よかったね。でも、数学はいまいちだね」という父親、「そうだね、よかったね。そして数学もその調子でがんばればきっとよくなるよ」という父親のどれが子供を優秀にするか考えてみればよい。
5) 腹を立てない。上の方法は自分がやるものであって、相手に強要すべきものではない。相手が最後まで話を聞かなかったと言って腹を立てるのは間違いである。
「そんな『いい人』になってちゃ、自分が損ばかりじゃないか」と思うかもしれないが、そんなもんである。そういう努力を「損」と取るか「徳」と取るかの問題か。