通常の読書では時間がかかるわりに記憶に残らないと述べました。これは読書の目的が明確ではなく漠然と文字を追っているからだと私は考えます。そこで、読書の目標を明確にし、本の全体像を頭に入れてから読むようにすることを提案したいと思います。
読書の目的を明確に
目標が明確な読書が有意味になるのは記憶にあるのではないでしょうか。試験などで必要な読書や、知りたいことを調べている時の読書は頭には残ったことと思います。
通常の読書では意識は分散してしまっていて記憶に残りにくくなっているのです。そして単調に文字面を追っているばかりだと読む速度も落ちてしまうのです。
つまり読書の目標を明確にして速く読もうという気構えをするだけでも、通常の読書よりも速くなり記憶にも残るようになります。主体的に読書をすることが大切なのです。
読書の目標とは
それでは読書を主体的にするための目標とは何でしょうか。
ここでは漠然と知識・教養を付けたいという場合を考えてみたいと思います。つまりその本を読むことで何が得られるのかは分からないが、ひとまずその本を読んでおきたいという場合です。
もちろん読むことで頭にはいくらかの情報を残しておきたいとします。自分にも人にも「その本は読んだことがある」と言えるようにする読書です。
そのような場合に読書によって得たい情報は以下のようなものでしょう。
- 本体情報(一次情報)
- 作者が言いたい主張
- 主張の説得の論理
- 自分が知らなかった情報
- 属性情報(二次情報)
- 本の基本情報 (題名、著者名、出版社、発行年など)
- 著者の経歴や立場
- 関連する本や参考文献
- 本の位置付けや評判
本文に向かう以外の時間が大切
ここで注目すべきは本文を読まなくても入手できる情報が多いということです。
読み始める前と後には本の基本情報や著者の経歴や立場などを必ずチェックするようにしましょう。ある情報がどこで得られたかを記憶することは非常に大切なことだからです。
そして機会があるごとに著者やその本に関する知識を入手し、読んで得た情報と関連付けていくように心掛けましょう。これは記憶を保持するためにも役立ちます。
まず目次を読む
さて、著者やその本の知識を整理できたら、じっくりと目次を読むことをお薦めします。
目次が提供する情報は膨大です。著者が何を主張しようとしているのか、どのように主題を問題にしているのか、その主張を論じるべく著者はどのような論理を展開しているのか - こういった問題は目次を読み解くことで容易に読み取れます。
また目次を頭に入れておくことで、全体の中での位置付けが分からずに漠然と文字を追うということもなくなります。
目次は本の地図です。もし目次が頭から抜けて全体の構造を忘れてしまった場合には、必ず目次を参照し直しましょう。
目次を読む際には分からない言葉も見付かるかもしれません。こういった場合には辞書や事典を引いたりする他、索引を利用するのも手です。きちんと目次を理解してから本を読む始めると理解が違います。
本文は流し読む
目次を読むことで本の全体像を掴み終えたら実際に本文に取り掛かりましょう。とは言え、もう著者の言いたいことや議論の組み立ては頭に入っています。自分が知らなかったり特別に面白いと思うことや衝撃を受ける所を探して読むような気分になります *1。
一方で自分にとって当然であったり興味がない部分は、確認する程度の注意力で読み飛ばしてゆくことができます。どうせ興味のないところはゆっくり読んだところで忘れてしまうからです。
もちろん、著者の言うことの意味が分からなかったり、反論したくなる部分もあることでしょう。私はそのような部分で悩むことはせずにひとまず印を付けて後で読み返すことにしています。後から読めば理解できたり、一見嘘に見えても他の部分との兼ね合いで著者がそう書いていることが分かる場合があるからです。
一見するとおかしな部分が実は後に衝撃的に正しい内容であるということは往々にしてあります。その場の簡単な判断でそのような出会いを潰してしまうのはもったいないことです *2。
おわりに
以上のように読書によって得たい情報を明確にし全体の内容を把握してから読むことで、漠然と著者の議論に付き合うことがなくなりめりはりを付けて文章を読めます。読むというよりも、議論や主張の確認や目新しい情報の検索といった心持ちで本を読むことになります。こうしてすっきりと全体を把握しながら読むことで、内容をきちんと把握できますし読書時間も短時間になることでしょう。