2007-08-03

速読読書術(4) 音読をやめ、一度に読み取る範囲を広げる

目的をはっきりさせて内容を整理して読むだけでは、当然、読書の速度に限界があります。ここでは一つ一つ文字を追うスタイルの読書をやめ、ブロックごとに読んでいく読書法をjおすすめしたいと思います。

音声化しなくても意味は理解できる

まず受け入れて欲しいことがあります。それは文字の意味は音声化しなくても把握できるということです。そして、その視覚のみによる意味理解の方が、音声化による意味理解よりも数段高速であるということです。

このことは文章を音声化しないで黙読している人にとっては自明のことでしょうが、頭の中で音読をしながら黙読をしている人にとっては受け入れずらいかもしれません。というのは特に意識をして読書の速度を上げようとした人でない限り、本を読むことは文字を頭の中の声により音声化することになっているからです。自然に文字を見ると頭の中では音になっているのです。

この音声化が無駄なのです。人は文字を見ただけでも意味を理解できるのです。

音声化しながら文字を追っている人は頭の中の声を消して読めるように努力してみてください。これは必ずできるようになります。そのためには音にするよりも速く目線を動かしながら読むことで、頭の声を消して読めるようになることと思います。速く読もうとすれば自然と頭の声にしている余裕はなくなるからです。また頭の音声化する能力を他の動作に向けてしまうのも手です。つまり別の音を聞いたり、あるいは話しながら本を読むことも効果があります。

音声化しないでも意味が把握できるようになればしめたものです。この動作に慣れてきたら一文字一文字追っていった目線を数文字ごとに追うようにしてください。一行を半分に分けて、その半分に一瞬だけ視線を当てたら次の半分に移るようにするのです。目線がジャンプするような感覚です。一瞬の視線でも数文字程度ならすぐに理解できることでしょう。これだけでも以前よりかなり速く読めるようになるはずです。

これだと内容が頭に残るか不安だと思うかもしれません。ただ、安心してください。音声化したところで、本の内容はたいして頭には残らないのです。意味を追いながら素早く読むことを何度もした方が本の内容は頭に残ると私は考えます。なぜなら、素早く読むことで意味の聯関を把握できるようになるからです。議論の全体像や概念や情報の様々な聯関という本が持つ有機性は、本の理解や記憶の保持に貢献するのです。

あくまで、議論や主張の確認や目新しい情報の検索のようにして読書してみて下さい。そして、全体像や意味の聯関を把握し味わって下さい。短時間で本を読める上に把握するのが難しい本の有機性を頭に格納できます。漠然とした読書による分散した記憶に比べて有機的な情報は記憶に残りやすいと私は考えます。

ただし、難しい本の場合には速くは読めません。これは当然のことで理解が伴なわないからです。あくまで意味が辿れるからこそ(確認、検索ということで)視線を進めてゆくわけで、意味も分からないのに視線を素早く動かしても仕方ありません。

一度に読みとる塊を大きくする

さて、数文字の塊で意味を把握して読めるようになったら、その意味を把握する塊を大きくして意味把握の速度も速くしてゆきましょう。これには二つの努力が必要になります。一つは視野の拡大でもう一つは意味把握の速度の向上です。

視野を広くするためにはいくつもの方法があります。大小いくつも書かれた同心円を見る、八の字や星などの図形を辿る、ページ一杯にばらばらに書かれた数字を探しながら辿る、ページ一杯に枡目に点を書いたものを見る、などです。こうした訓練を辛抱強く続けることで視野は確実に広くなります。

最初は数文字であった視野はすぐに広がり、縦書きの文庫本程度なら一行に対し二回見る程度でよくなると思います。

そして、なんとか一行を一目で見えるようになれば、その時には同時に数行を一目で読めるようになっているはずです。数行を一目で読めれば一ページは数回の視線移動で読めるようになります。あとは更に視野を拡大して一ページを一目で読めるようにもなるでしょうし、更には見開きを一目で読めるようにもなるのだと思います*3。

一方で、視野が捉えた情報を把握するための訓練が必要になります。これは文法に着目して一目見てどの単語がどういう文法的機能なのかを把握する訓練です。また、一目で一文以上の文章を読むとなるとそれぞれの文章の関係を把握する力も必要になります。言い替えれば一目で見た情報を頭に格納する訓練です。

こう書くと理論的なようにも聴こえそうですが、意味をパッと把握するということですのでかなり感覚的な問題になります。ある速読の学校ではこの訓練のため、一つか複数の文を見て即座にその単語や文の関係を図にする練習をやっているそうです。

そうした練習も有益だとは思いますが、それぞれの要素の関係を意識的に把握しながら読んでいき、意味関係のパターンのストックを増やしていけばいいのではないかと私は思います。基本的に文の中の単語の関係は一定のパターンしかないはずですし、段落内における文の関係もだいたいのパターンはあると思いますおおまかに言えば逆説があるかないか、など)。

そうしたパターンを頭に入れておけば「あ、これはこういう意味だ」と素早く直観的に文章を理解できるようになるというわけです。

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以上のようにして視野を広げ、そして広げた視野の内容を素早く理解するようになれば、かなりの速さで本を読めるようになります。そしてこうして速く読んだ方が記憶に残るのです。

確かに一回読んだだけでは記憶の違いは分かりにくいかもしれません。しかし、速く読めるということは反復しやすいということです。現在、私は新書なら三十分程度で読めますが、その本を三時間かけて一度読むよりは、同じ三時間で六回読んだ方が頭に残ると断言できます *4。

以上の方法で本を素早く読めるようになると同じ本を何度も読めるようになります。二度目や三度目の方が一度目よりも内容を理解しているので速く読めるはずです。一度読んで内容を覚えていなければ何度も読めばいいのです。素早く何度も読むことで記憶が固定されてゆきます。