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欲望について度々考える。欲望に踊らされるでもなく、欲望を抑圧するでもなく、生きるということはどういうことか。すると欲望には二つあるようにも思えてきたのでメモしておく。
ここでは欲望を二つに分けてみたい。すなわち所有と創造とにである。所有への欲望は既存価値の賛美であり、それは端的に「くいたい」と叫ぶだろう。一方で創造への欲望は既存価値の破壊で、それは「うみたい」と叫ぶだろう。
欲望である以上、そこには力の問題がつきまとう。しかし所有欲と創造欲ではその働き方が違う。
所有欲は既存の何かを我が物にしたいという欲望である。その欲望の充足にあたっては、その対象を排他的に取得し、その所有を他者から承認されることが必要になる。ここで暴力が向けられるのは押しのけられる他者である。
創造欲では未だ存在しない何かを拵えたい、あるいはそうした誕生の場に立ち会いたいという欲望である。この欲望の充足には既存の存在物の破壊が伴うだろう。つまり世界全体に対して暴力が向けられる。
例えば、人は子を欲しがる。これは所有欲か、それとも創造欲か。あるいは、農耕で暮らす人々にとって、日々の労働とは所有欲か、それとも創造欲か。
この問いが既に答になっているのだが、人は創造と誕生に立ち会うことを欲望する動物である。人はより良いものを求め、現状を破壊してゆく。創造は常に危機を要請する。だからこそ、創造においては常に過去が参照され、模倣される。誕生においては、過去の起源が ―― あるいは歴史が ―― その場で回帰する。