2008-03-02

ノートの取り方(5) 常に追記する

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痕跡を残す習慣の利点はすぐには気がつかない。しかし、数年たってから、読んだはずだがまったく記憶にない本を開く時に、あるいは、自分が書いたのに何の記憶もない文書やコードを読むときに、はじめてその利点を知ることができる。その小さな痕跡が、自分の記憶を呼びさましてくれる。

一言のメモでも一本の線ですら有益だ。それを手掛かりにしてその時の記憶を手繰ることができることがある。

一番有益なのは、感情の記録だ。どんな要約よりも、その時に自分が何を感じたかが重要だ。その時の気分を手掛りにして、様々なことを思い出せる。同じくらい重要なのは日付だ。その日付をたよりにして、日記などを開いて、当時の状況を思い出せる。そうすれば、その情報のリアルな記憶を呼び覚ましやすい。自分の人生というインデックスほど有効なアイコンはない。

痕跡を残すのは習慣にしたほうがいい。人間は何でも忘れてしまう。本当に大切なことをいとも簡単に忘れてしまう。ふと気が付くと、自分が何をするつもりでそこにいるのか、その何年という時間を注ぎこんでいたのかすら、あっさりと忘れてしまう。何かの痕跡なしには、何も保つことが出来ない。だから、私たちは痕跡を残し続ける。

辞書を開いたら探した単語に線を引く、本を開けば自分に意味のあった文に線を引く。思いついたらコメントを残す。ノートを開いたら、読んだところにコメントしたり、線を引く。そして、そうした全ての重要なことに日付を残す。

関連した情報があるのなら、他の情報源からの情報も加える。勉強が進んだら、内容の要約やまとめ、他の事項との関連なども書く。チャートなどを作成するのもよいだろう。紙が足らなければテープで貼ればいい。本から切り取って貼るのもよい。できる限り、情報は一箇所にまとめるのが鉄則だ。

重要なことは、自分が「情報」という抽象的なことを「処理」しているのだとは思わないこと。そんな「処理」できる情報なんて大切じゃない。それと戯れるなかで、自分の人生が変わってしまうようなものが本物の情報だ。だから 現実の「物」に自分の「痕跡」を残しているというリアルな実感を大切にすること。それが現実の空間の中で、自分の人生の中で行われているという実感を大切にすることだ。そうして作った情報はきっと自分を支える力になる。

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