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この本の第一印象は「きれいな本」。カラーページがほとんどで、ぱらぱらとページを開けば懐かしい印象の食べ物や小物などが目に飛び込んでくる。しっかりと丈夫そうな製本で、紙質が良いからページ数は130頁しかないのに、1cm以上の厚み。前回に引き続き「女性誌……というかクロワッサンってのはたいしたもんだ」と感じる。
俺はおっさんであり、女性誌を手にすることはありえない。しかし、実際にこういう本をぱらぱらしていると「おっさんだって、いや、おっさんだからこそ、昔ながらの暮らしの知恵を眺めるのもいいんじゃないか」とか思う。
いいじゃないか、和食、いいじゃないか、火鉢。いいじゃないか、女性誌ならではの複雑なレイアウト、いいじゃないか、ありえないほど綺麗な写真、いいねえ、事実より情感優先の文章、いいよ、ネタがごったになってるとしか思えない複雑な構成、うん、それを反映した目次(「女性は目次は見ないんだろうな」とぼやく)……。
なんというか、本気で異次元。こう考えると、男性向けの本も女性向の本も両方読める女性ってのは本当に頭がいいんだな、とつくづく感じる(皮肉じゃないです)。ってか、ふつーに頭が切り替わるだけで、切り替わらない俺が変なのか、とか。
読み進めてゆくと(というか、こういう本はパラパラやるもんで、読み進める本じゃないのかもしれないが)、それぞれの知恵、技術が紹介者の母親や祖母の思い出と強く結びついている。ええ、この本のどのレシピ一つ取って見てもちゃんと思い出が詰まってます。「この料理はね、これがコツよ」みたいなおばあちゃんの声とか。
んで、そうした複数の人の思い出の声にしばらく浸っていると、なんだかこっちまで「夏の夕暮れ、縁側で涼みながら、ヒグラシの声に耳を傾けていると、どこか遠くで鐘の音が聞こえてきた」みたいな俺にはありえない懐かしさに満ちた「思い出」が脳内を占拠する。「あ、もちろん、浴衣ね、浴衣」
あー、ごめんなさい。俺が書くとダメなんだよ。どうしても皮肉みたいになっちまう。違うんだよ。いいじゃねえか、和食。いいじゃねえか、火鉢、いいじゃねえか、米のとぎ汁で床磨くの。んで、俺は浴衣でさ、とか。
はあ、そのためにはちゃんとアレだ。和な家建てないとな、とか。
いやいや、そういう問題じゃねえだろ? いいじゃねえか、和、まだ文化断絶してねえよ、和。
うーん、どうしてこの本を読むと、出てる人が外人というか自分の文化圏と違う人に見えてしまうんだろう? うーん。うーん。そういや、すりこぎとか火鉢とか最近みないし、焼き魚ですら、最近食べてないよな……。なんか、俺、この本を読むレベルに到達してないな。
いや、だからこそ、この本買おうぜ。みんなで読もうぜ。ぜってー、泣きたくなるから。自分が味わったことも無い「失ったもの」への懐かしさでね。
- クロワッサン編集部
- マガジンハウス
- 980円
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