2007-03-31

ロックの歴史(3) 復習

前回と前々回の復習

さて、前回と前々回を軽く復習しよう。つまり20年代のブルーズから60年代後半までのロックの話だ。やや黒人と白人、アメリカとイギリスの話が混乱しやすいから、そこに注意しながら整理してみよう。

簡単に言えば

  1. 黒人のブルーズと白人のヒルビリーとのハイブリッドでロックンロールが誕生し
  2. それがイギリスで白人のバンド音楽としての「ロック」となり
  3. 60年代後半アメリカでの激しいロック文化となったんだったね。

まず前々回の「ブルーズ(ブルース)の歴史」では「デルタ・ブルーズ」と「シカゴ・ブルーズの主に二つの話をした。

  • まず、アメリカ南部、特にミシシッピ・デルタやテキサスの黒人達が「ブルーズ」特に「デルタ・ブルーズ」「カントリー・ブルーズ」と呼ばれる音楽を戦前に確立した話をした。サン・ハウスやロバート・ジョンソンなどがいたね。
  • 次に、戦後にそうした黒人が農村から都市に流入する中で音楽も電気化していった話をした。これが「シカゴ・ブルーズ」と呼ばれるんだったね。ここにはマディー・ウォーターズ、ハウリン・ウルフがいたね。テキサスのハウリン・ウルフも忘れちゃいけないよ。
ここまでは演るのも聞くのも黒人だ。

次に前回の「ロックの歴史(1)」では「ロックの成立までの話」と「60年代後半の高まりと行き詰まり」の二つの話をしたね。

「ロック成立までの話」は全部で四つの話をしたね。

  1. まず、戦前に成立した「ヒルビリー/カントリー&ウェスタン」と「フォーク」という白人音楽を簡単に紹介したね。
  2. 次に50年代の都市では、黒人音楽の中でも、デルタ・ブルースと言うよりニューオリンズ・ジャズなどの軽快で親しみやすい音楽の影響を受けたR&Bが成立していった話をした。これは白人も聴いたんだったね。
  3. 三番目に、その黒人のR&Bと白人のヒルビリーの影響下に「ロックンロール/ロカビリー」が誕生したんだ。「ロック第一世代」の白人の若者達だ。「ロックの神様」エルヴィス・プレスリーの登場だね。ここまではアメリカの話だ。
  4. 最後の四番目に、60年代「ロック第一世代」の影響下にイギリスの若者がバンド音楽としての「ロック」を成立させる。白人音楽としてのロックの誕生だ。ここでビートルズやストーンズが出てくる。彼らはアメリカ音楽に深く学びデルタやシカゴのブルーズも貪欲に取り入れるんだ(クリームなど)。

以上がロック成立までの話だ。後は60年代後半のアメリカでの高まりと行き詰まりの話になったね。

  1. まず、イギリスからの逆輸入としての影響もある中で、アメリカでもロックやブルーズが激しく高まったんだったね。ここで登場するジャニスやジミヘンは私の一番のお気に入りだ。特に反戦・反権力ムードのサン・フランシスコで様々なバンドが活躍をしていったんだ(ドアーズ、グレイトフル・デッドなど)。勿論、フォークのボブ・ディランも忘れられないが、フォークはフォークで難しいのでまたいつか。
  2. 次に、急速に過激化したロックは、商業主義との関わりの問題や、60年代の終わりのジャニス、ジミヘン、ドアーズのジム・モリソンの麻薬過剰摂取によると言われる死などの事件の中、それまでの見直しをしてゆくことになり、質が変わってゆくんだ。ここが「ロックは死んだ」と言われる所以だ。

さあ、ここまでが前回までの話だ。御苦労様。かなりシンプルにいい加減に図式化しているんだけど、それでもなかなか複雑だね。

復習の補足

これだけシンプルにしてるから漏れた話だらけなんだけど、中でも注意が必要なポイントを二つだけ挙げておく。「ソウル」の問題と「ジャズ」の問題だ。勿論、詳しくは別の時に話したい。

まず、R&Bとソウルの話。R&Bがロックンロールとなり白人の「ロック」となる中、60年代の黒人達は自分達の表現を求め、彼らの一部はR&Bをロックとは違う形で変化させてゆく。そして60年代後半に「ソウル」が生まれてゆく(R&Bの意味の範囲は広く定義が難しい。ただロックンロールにならなかったR&Bは明確に存在し、続いていったし、今も続いている。これはブルーズも同じことだが、R&Bの表現は非常に多彩であり言葉にするのが難しい)。差別され続けた都市の黒人がここでようやく「ブラック・イズ・ビューティフル」「兄弟よ語ろう」と叫び、自分達を肯定した音楽を生みだしたんだ(ブルーズは「憂鬱」という意味だからね)。このソウルはやがてファンクやラップ、ヒップホップへと繋がってゆくんだ。ただし、そのベースは常にR&Bと呼べば呼べてしまう。

次に、ジャズの話は簡単に二点だけ触れておく。

  1. まず、ジャズは50年代に最盛期を迎え、60年代にジャズで鍛えたレベルの高いホーンやドラムなどのプレイヤーが、アメリカのロックやソウルに影響を与えたこと(勿論、逆にR&Bのプレイヤーがジャズに行ったのも多い)。
  2. 次に、70年代にロックが行き詰まりを見せる中、ジャズとロックの高次の融合が叫ばれ「フュージョン」と呼ばれる音楽が生まれたこと。
この二つは記憶のどこかに入れておいてもいいかもしれない。

さあ、復習は以上だ。ごくろうさま。次から70年代からのロックを見てゆこう。