2007-07-08

[書評] 仏教とヨーガ / 保坂俊司

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仏教とヨーガの関係を整理。豊かな宗教を取り戻すために。

実は本書は以前も取り上げた本だが(2007/01/09仏教関係の読書記録)また取り上げることにする。ヨーガや仏教の理解がこの半年で深まったせいもあり、本書のように全体を大きく眺めるような本を再び読みたくなったからだ。

ヨーガと仏教というと、どういうイメージだろうか。ヨーガは怪しいイメージかもしれないし、逆にホットヨガのように若い女性のものというイメージかもしれない。仏教は葬式の道具というのが一般的か。あるいは、その両方に対し、オウム真理教などの過激な新興宗教を連想する方もいるかもしれない。

本書では、そうした現代の「宗教」観を問い直し、現代の日本人の心身を救う正しい宗教のイメージを考える。そのキーワードとなるのが、ヨーガと仏教なのである。

***

目次は以下の通りである。

序 仏教ヨーガの提唱
第1章 「宗教」と宗教観
第2章 ヨーガの諸相
第3章 インドにおけるヨーガの歴史
第4章 ゴータマ・ブッダとヨーガ
第5章 『ヨーガ・スートラ』の教え
第6章 仏教の展開とヨーガ
第7章 日本におけるヨーガ

まず、筆者はインドにおいてヨーガが瞑想法として、いかに重要な役割を担っていたのかを説明する。仏教も、ヒンドゥー教も、それどころかイスラム教のスーフィズムもヨーガの影響なしには、現在の形ではないとのことである。この視点で考えると、坐禅はヨーガの一種である。

また、一方で、仏教の知恵もヨーガの成立に強い影響を与えたことも述べられてゆく。そうして、ヨーガと仏教が混然と日本の文化に入っていることを明らかにする。ヨーガと仏教は切り離すことはできないのである。

そこで考えられるのは、ヨーガの修行と仏教の知恵を組み合わせてゆくということだろう。これが、著者の主張する、心身の本当の健康の道である。

特に興味をひいたのは、ヨーガ・スートラの考証であり、その中で仏教の影響の部分などを分析してあったことである。ヨーガ・スートラの「ヨーガは心の作用の止滅である」などの部分は、初期仏教の強い影響からと説いた部分であり、逆に最終章では唯識に対する反論もあるとのこと。ヨーガ学派は、仏教と極めて近い場所にいたことがわかる。

また、外部から見ていたヨーガ学派のヨーガ・スートラを読むことで、初期仏教(原始仏教)から瑜伽行唯識派という仏教の発展も読み取れる。以前にも感じていた仏教とヨーガの関係の疑問(『インテグラル・ヨーガ - パタンジャリのヨーガ・スートラ』の書評を参照)も、整理できた感じだ。

本書を読むとヨーガが実に歴史が長く、その原理も実践方法も多様であることが分かる(先日の『ヨーガ・セラピー』はハタヨーガに基づいた心身の健康法と言える)。そして、その修行法なくして仏教の智慧がなかったことも考えると、仏教を考える上でもしっかりと学びたい分野である。

著者はオウム真理教の一連の事件をしっかりと受け止め、現代日本人にとっての本当の宗教を考えている。宗教などに嫌悪を感じる人も、是非一度は眺めてみて欲しい。