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最近つかっている文具の紹介 を書いたら自分の文具の遍歴について綴りたくなった。今回は中学高校時代に使っていた Pilot Dr.Grip について。
私とボールペンとの出会いは中学2年生に始まる。近所の本屋で売っていたノート術とかの勉強の仕方の本で、鉛筆やシャープペンではなく、ボールペンを使うことを勧めていた。濃い筆跡の方が記憶に残りやすいのだという。それ以後、私は書くときにはボールペンを使うことになった。
学生時代、書くとは勉強することであった。そして勉強とはノートに書くことであり、ノートにはマーキングが必要不可欠だった。当時、私は蛍光ペンを利用していたので水性では滲み、具合が悪かった。また油性では書き味に問題があった。私はゲルインクを使うようになった。Pilot の G-1 と、それと同じ替え芯を利用する Dr. Grip を利用していた。そのくっきりとした筆跡が私の記憶力向上に資したのは確実と思われる。
その書き味はぬるぬるとしたものだった。さらさらではない。ねばりがある。しかし、油性ボールペンのような書くことに抵抗するねばりではない。溢れんばかりのインクフローに支えられたぬるぬる感だ。紙の上にインクを押し出しながら、ペン自体が進んで行くような粘りであった。当初はこのペン自体が自律して進むような感覚に戸惑うほどだった。
ゲルインクペン、殊に Dr. Grip を利用することで、私はくっきりとした筆跡と、負担の軽い書字環境を手に入れることになった。滑らかにペンは進み、字は何年たとうが明瞭さを保つ。溢れんばかりのインクで紙の上を進んで行ってくれる、あのゲルインクペンがなかったら、中学高校時代に、あれほどに文字を書いたのか疑問である。
また、あの明瞭な筆跡と鉛筆ではなくインクであることによる文字の独特のニュアンスがなければ、いまとは異なった文体で言葉を綴っているのではないかと思う。その意味で、Dr. Grip は私の思考の基礎(というほどの大袈裟なものは何もないが)を形成したといっても何も大袈裟ではない。