2007-04-14

[書評] ビルとアンの愛の法則 / ウィリアム・ナーグラー、アン・アンドロフ

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マヌケなタイトルである。が、内容はよかった。

タイトルはマヌケだが、ビルは

対人関係法および効果的対人関係論コミュニケーションの専門家。この分野では合衆国を代表する精神医学の権威。ミシガン大学、カリフォルニア大学を卒業、現在はハーヴァード大学のフェロー(特別研究員)
らしく、アンは
幸福かつ永続的対人関係に関する医療アドミニストレーターで、カウンセラー
とのことで、肩書で判断するのもアレだけど、全然マヌケでもなんでもない。

更にタイトルにこだわってみると、原書のタイトルは"Dirty Half Dozen"とある。finalventさん曰く

原書の標題が"Dirty Half Dozen"とあるように、ラッパーならすぐピンとくるだろうが、"dirty dosens"(参照)の洒落だ。といっても、会話のノリの良さというより、この本では、悪口の言い合い状況への対処という含みがある。
とのこと。wikipediaによると
ダズンズ(The dozens)とはアフリカン・アメリカン(黒人)の伝統、習慣のひとつ。観客がいるところで、1対1で互いに相手の母親に関する罵りの言葉を言いあって、先に怒ったり言い返せなくなったほうが負け、というゲーム。うまい人は尊敬される。目的は罵倒や喧嘩をすることではなく、馬鹿にされても怒らない精神力の強さや言葉の表現力を競うこと。フリースタイルのラップの源流といわれ、ラップの発展の一要素といわれている。(ダズンズ - Wikipedia)

この本は「そのダズンズを半分にしましょ」ということかな。んで、6コの法則を教えてくれるというわけ。本当は結構シャレた題名だったのである。が、まあ、日本文化で悪口を言うような芸能はないわけで、いい題名が付けられないのは仕方ないかな。

この6コの法則を導くため、ビルとアンは

長年、幸福に暮らしている夫婦を観察した。歳月とともに深まる幸福な仕事上の対人関係を維持している人々を観察した。長い間、幸福な友人関係を維持している人々を観察した。何がどのように行われるかを観察し、どんな行動様式が対人関係を支え、繁栄させるかを観察した。私たちは、永続する幸福な対人関係に共通して見られる要素や特徴を搜し求めた。そして、発見したのである。
とのこと。決して、ただのボヤキではないのである。

薄い本なので一時間もかからず読了できると思うが、その6コの法則とは

  1. ロマンスを殺せ
  2. フェアプレーは禁物
  3. しゃべるな、待て
  4. ウソも方便
  5. カネを支配せよ
  6. 些事こそ全て
である。ただ、くれぐれも法則の文字面じゃなくて、内容までしっかりと理解して欲しい。

書いてあることは、結構当たり前だったり、アメリカ人より日本人がフツーにしてそうに見える。しかし、どれも極めて「オトナだな」と感じさせてくれる。ちょっと常識とズレているが、「ああ、確かにな」と思わせる。それに文書にまとめてあるので、とても説得力がある気がして「やってみよう」という気にさせてくれる。案外「オトナだな」と感じさせる考えは、あまり文字にはなっていないものだ。

本はとても薄い。私はぶ厚いのがお好きなのだが、逆にこういう「実践的」な本は薄いのに限ると思う。厚い本だと、頭がゴチャゴチャしてしまうからだ。薄い本の、それも一部を一つずつ実践していくのが一番だと思う。この本でも、月曜日から土曜日まで一日一つの法則を実践し、日曜日はやすんで、また次の週に実践することを薦めている。いい方法だと思う。

そして目のつく所に置いておき、たまにパラパラとやって頭と体に滲みこませることだろう。

最後になるが、皮肉を一つ。

本書が提案している生き方は、そもそも日本人が特に好きなライフスタイルだったと思う。「ロマンス」と関係なく暮らし、対人関係上の摩擦を極度に嫌い、そもそも話すことそのものを嫌い、嘘も方便で、些事にうるさいと言えば、少し昔の日本人の典型である。

それをアメリカ発の文化(特に音楽や映画など)の影響で、日本人が次第に捨てていったものだと思う。恋もするし、自己主張もするようになった。つまり、日本人はアメリカの影響で意識して "dirty dozen" するようになったのだ言えないかと思う。いや、勿論「消費社会」「男女均等」とか色んな理屈もあるだろーけどね。

そう考えると、アメリカの学者さんに治す方法教えてもらうというのも……ねえ。

いや、いいものは、いいんだけど