2007-04-17

[書評] ロジカル・コミュニケーション / 安井正(2007)

本が好き!からの献本書評。これまたとても良書。別にただで貰ったら褒める訳じゃない(けなした本もあるよ。コレとか、コレとか、あとコレとかコレとか)。なんと11本中7本も「当たり」なのである。これは凄いことである!

ただ、これは考えてみれば当然かもしれない。どの本も、出版社がブロガーに本を配ってまで、流行させようとしている本なのだ。それだから、どれも良くできているのは当然と言えるだろう。こうしたシステムを考えた本が好き!には本当に感謝である。

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かけてもいいが、このサイズのバナーを使用したのは私が初めてだろうと思う。


さて、与太話はこの変にして書評をすることにします。

本書は「明快で、論理的で、説得力のある伝え方」を習得させてくれる本です。本書ではそうした伝え方を「ロジカル・コミュニケーション」と呼びます。著者は二十年以上に渡り、企業を対象にした研修で「ロジック」を教えてきたとのことで、事実、有益な実例や経験談を豊富に与えてくれます。

本書評では、まず本書のシンプルで親しみやすい特徴を説明し、次に、その特徴を保ちながらも有益な能力開発の書物となっていることを述べました。

1. 本書の特徴とは?

本書の特徴を簡単に言うと、典型的な日本人のコミュニケーション上の問題を解決すべく、シンプルな方法を実例を通じて、親しみやすく学べるように配慮した本と言えるでしょう。

この点を内容面と外見面のそれぞれについて考えてみましょう。

まず、内容面では3点あります。

  1. 日本と欧米の土壌の違いを意識。「日本人のための」ロジカル・コミュニケーションを提唱。
  2. 方法を「情報のアウトライン化」一本に。理解・習得を容易に。
  3. 豊富な具体例を掲載(良い例、悪い例)。実例を通して学習できる。
以上より、内容面については、豊富な具体例の「演習」を通じ、日本人の典型的問題点に対処すべく、シンプルな「ロジカル・コミュニケーション」の能力を開発させてくれると言えるでしょう。

次に外見面の特徴も考えてみます。同様に3点あります。

  1. 豊富な図表と親しみやすいイラスト、キャラクター(蛙)
  2. コンパクト(19cm x 126p)
  3. 全ページカラー
総じて言えば、類書と比べても、特に親しみやすく、読みやすい本作りが徹底されていると言えるでしょう。

2. シンプルなのに有益なのは何故か?

本書はシンプルで親しみやすいですが、とても有益です。その理由は2つあります。

  1. アウトライン化の習熟に特化している点
  2. 豊富な実例を通じて学べる点
それではこの2点について順番に説明していきます。

2.1 アウトライン化の特化は有益

まず、アウトライン化の習熟に特化することが有効である理由は3つあります。

  1. アウトライン化は必要不可欠のテクニックであり、全てのコミュニケーション技術の土台となる
  2. 順番付けて話すことについて、特に日本人は無頓着
  3. 事前にアウトラインにして整理することで、その他の日本人の典型的なコミュニケーション上の欠陥も抑制できる。

一つ一つ確認をしましょう。まず、アウトライン化が土台になることは当然と思います。他の技法では使える場面、使えない場面がありますが、全体を見通してから話すこと、その枠組みを組み立ててから話すことは、習熟すれば、いかなる場面でも使える技術です。

次の点も自明でしょう。この文書のように、順番に話す人間は日本人の中ではごく少数です。多くの日本人は思い付いたり、感じた順番で話すために、そのうち何を話してるのか自分でも分からなくなってしまうのです。そして、そうした話し方を許容する文化があり、どこかで自分で努力しないとなおりません。

最後に、情報をアウトラインにすることで日本人の典型的な問題が防げることについてです。これについては本書で「日本人に共通する話し方の問題点」を11個の問題点を列挙しています。

  1. 結論がはっきりしない
  2. 曖昧な表現を好む
  3. 話の主体性が見えない
  4. 論理的飛躍が許される
  5. 話の内容が連鎖的に変わる
  6. 質疑応答の直接性を重要視しない
  7. 言葉数が少なく、コミュニケーションに対する意欲が低い
  8. 重要な内容と瑣末な内容が混在する
  9. 短かい単語、句、センテンスを用いる
  10. 話の展開が予測できない
  11. たとえ話や事例を積上げて話を構成する
その中でアウトライン化で改善できる点を挙げてみます。1、4、5、6、8、10、11の7個です。つまり、2、3、7、9以外はアウトライン化に習熟すれば改善するのです。つまり、初歩段階では、アウトライン化の習得に特化することが何よりの改善につながるというわけです。

2.2 実例の理解も有益

次に、本書がこのアウトライン化の能力を高めるのに、豊富な実例を与えてくれることの有益さを考えますと3点あります。

  1. 話し方は知識ではなく能力。使えて初めて役に立つ。
  2. 「悪い例」を読むことで気がつかなかった問題点が明らかになる。
  3. 「良い例」を読めば改善の度合いが納得できる

こうして実感を伴なった理解で、実際の能力向上へとつながる訳です。こう考えると、演習問題のない論理の本は本当に役に立つのか疑問です。

3. まとめ

以上、長々と本書のシンプルで親しみやすい特徴と、特徴を保ちながらも有益な能力開発の書物となっていることを述べました。しかし肝心の方法についてはわざとふせました。結論は一つです。哀れな「アウトライン化ってなんだよー」「おーい、グーグルさーん」という皆さん、本書を書いましょう。(ちなみにフォントの問題じゃありませんよ、念のため。)

本当に有益なコト書いてありますし、実例も良いものです。更に巻末には25の整理パターンも載っていてこれまた非常に有益です。

ちなみに本書の能力と関係なく書いているので、本書評を基にして、本書を評価するのはいけません。ちなみに、私は「3点あります」と書くたびに、クスクスと内心で笑ってしまいましたよ。ホントに3つになるか分かりもしないのに適当に数を合わせて書きました。まったく困った男です。


ロジカル・コミュニケーション

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