2008-09-28

多重化する世界

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これから世界は多層化するはずで、国家というのはその中の(主要ではあるが)一つのレイヤーに過ぎなくなると俺は思っている。国民国家を成立・維持させる上でマスメディアが果たした役割はとても大きいが、多層化する過程でナショナルなメディアも弱体化することだろう。

同様に教育・メディア・貨幣も多層化するはずだ。これはイギリスの現状を考えれば一番わかりやすいと思う。移民の多いイギリスでは、イギリスという国家の中で、4つの非独立国があり、更に多くの移民が居住しており、各民族が独自の教育やメディアを持ち始めている。それどころかスコットランドなんかは貨幣だって発行している。こうした現象を見る上でも EU は将来を見るいいモデルになっている。

世界多重化の理由はそれが効率的だから。いままでは物流や情報伝達のコストが高かったから国家という単位で物と情報を運び、それを国民という単位でマスに消費していたが、そうしたコストが低くなることで国境を越えた物と情報の移動が起こり、結果として国民というマスの消費は(もちろん主流ではあるものの)低下し、趣味の多様化がクローズアップされてゆくようになる。その流れに逆らってまで国家を煽るのは効率が悪い。

多層化する世界というヴィジョンが明らかならば、それに適したシステムも考えやすい。教育・報道・貨幣とは、従来、国家が共同幻想を実現する道具だった。そうした国家が一つのレイヤー化してゆく中で、上の教育・報道・貨幣が改変されてゆく。あるものは国家よりも広いレイヤーが力を持つだろうし、あるものは国家よりも小さなレイヤーが力を持つだろう。

ただし、重要なのは「地縁」だけではなく、むしろ個人の趣味や興味に基いた結合が重要になる。「地域」や「家族」は更に弱体化する可能性が高い。多くの人が今後、自分の足元を軽蔑しつつ、「あの世」へとはばたいてゆくことだろう。

こうした多様化と従来の「共同体的なもの」の崩壊は無論ネットの影響が大きい。マス以外のメディアの実現は、Blog, Wiki, SNS など CGM がそれを実体化していると言える。そうしたネットのメディアはどれも CMS が支えており、コンテンツの作成を用意にしたことが、基本だが極めて重要だ。だから、これからも更に「世界を変える」ような CMS が出てくれば、世界多重化の速度は加速するだろう。

今後はそうした消費者ベースの情報も、また従来のマスの側の情報(新聞や書籍、テレビ番組など)も、ウェブサービス化し各種 API が公開されてゆくだろう。マッシュアップやセマンティック・ウェブなどの技術により、その蓄積された情報のスケールメリットは上昇するはずだ。国境なんてどこにある?

そうした「地縁・国家」でも「会社・市場」でもない空間で生きてゆく人が、増えてゆくだろう。勿論「食える」ということを含む。いや、そもそも既にネットの世界で生きている人は多いから言うまでもないかもしれない。しかし、そうした勢力の教育やメディアというものが今後形を持っていくのだと思える。

さて、日本では、アジアという単位でのコミットは少ないが、教育・報道で各地の特色が見られるようになってきている。一方、ナショナルな単位での教育や報道は弱体化している。ここにチャンスがあるのは間違いない。地方分権が進めばこれは更に明白な流れになるだろう。

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