2007-07-01

[書評] あなたはコンピュータを理解していますか? / 梅津信幸

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本書はコンピュータの基本となる概念を概説した本である。こうした基本について、一般の人に分かりやすく書いた本はほとんど無いと思う。その意味で、コンピュータに携わる人には是非とも読んで欲しい本だ。


巷にあるコンピュータを理解する本のほとんどは、特定のソフトの解説本である。だから、コンピュータが分かるとは、ファイルやフォルダ、マウスなどを利用することだと思っている人がいる。

実はそうした知識はコンピュータの本質と関係がない。それはコンピュータという装置そのものでは人間に使いにくいと判断した人々が作ったインターフェイスである。インターフェイスは、コンピュータの本質的動作を、現実に存在するものを操作の比喩を利用することで利用者の利便を図っている以上のものではない。

通常使う上では、そうしたインターフェイスの知識で問題はないと思う。しかし、インターフェイスはコロコロと変わる。すると、本質を理解している人は「ああ、あの動きを、こう見せてるのか」と推測が働くが、本質を理解していない人はさっぱり訳が分からなくなってしまうだろう。



実はコンピュータの本質はコンピュータが誕生し、実用化してからほとんど変化はしていない。基本的概念は変わっていない。ただ、それを利用者に見せるインターフェイスが変化しているだけと言える。

勿論、こうした基本概念そのものが変化してしまう可能性はある。コンピュータの基本原理が変わってしまう可能性もある。しかし、かなりの期間は変化しないだろうし、変化したとしても、おおよそは現在の原理を利用することは確実に思える。

また、現在のコンピュータの理解をする上でも、当然のことながら、本質の原理の理解は役に立つ。

コンピュータに不慣れな人は、ともすると、インターフェイスの下には「人間のような」何かが存在しているように思うらしい。つまり調子が良かったり、機嫌が悪かったりする。また、コンピュータが得意な人は「コンピュータの気持ちが分かる人」と思ったりする。つまり、コンピュータは人間の把握を超越した原理が備わっていると思っているように見える。

これは事実ではない。コンピュータは原理の上に動いている。それは人間が把握可能なのである。

そして、これが重要なことだが、それらは、それほどに難しい原理ではない。勿論、奥は深い。しかし、その原理そのものを理解すること自体は、丁寧に解説を読み、手を動かしてみれば難しくない。

本書は、こうした原理を、これでもかというくらい丁寧に丁寧に丁寧に解説している。コンピュータを理解しようと思った人は、まず本書を通読してみて、簡単な見取り図にしてみるのがよいだろう。これだけで「なんとなく分かっているコトバ」「なんとなく使っているコトバ」の意味が充実したものになる筈だ。分かっている人は説明するのが上手くなると思う。

コンピュータを知ってる人も知らない人も役に立つ本だ。是非一度、手にとって欲しい。


第1章 その味噌汁の塩分はいかほど?
 ~正味の情報量は意外と少ない~
 1.1 インスタント味噌汁が商品として存在可能な理由
 1.2 人間の手、ドラえもんの手、そしてコンピュータの手
 1.3 1杯の味噌汁の中に塩を求めて
 1.4 たいへん「ありがたい」お話
 1.5 言葉の塩分量を調べてみよう
 1.6 まとめ:データとは情報を入れる容器である
 Column アナログマンとデジタルマン

第2章 油田のパイプラインと伝言ゲームの連続
 ~パイプが細けりゃ、通るものも通らない~
 2.1 パイプをつなげ! はて、どうやって?
 2.2 向こう側とこちら側をつなぐもの
 2.3 限界のその向こう側
 2.4 濃縮還元な塩水の作り方
 2.5 コンピュータには何が見えているか
 2.6 まとめ:情報量はわかった、では情報とは?
 Column 魔法の塩分計測器・エントロピー

第3章 自動販売機はコンピュータ理解の始まり
 ~あるいは、自動販売機と人生ゲームのステキな関係~
 3.1 自動販売機の気持ちになって考える
 3.2 入ってきたお金を覚えよう
 3.3 他に似ているものがないか考える
 3.4 ちょっと難しく考える:抽象化のキモ
 3.5 まとめ:計算機の動きは絶えずして、しかも元の状態にあらず
 Column エントロピーのグラフ

第4章 記憶のカースト制
 ~時間と空間の近さ・遠さ~
 4-1 汝のプログラムを愛せよ
 4.2 蓄音機の針は踊る
 4.3 二兎を追うモノ
 4.4 まとめ:メモリは一列でもあり、ピラミッドでもある

第5章 師宣わく「未来は常に移り変わっておる」
 ~コンピュータの限界とその先~
 5.1 チューリングの置き土産
 5.2 未来へと続く道
 5.3 未来の社会は
 5.4 まとめ:未来は常に移り変わっている
 Column アプリケーション



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