2008-05-23

金澤正剛『中世音楽の精神史』

このエントリーをはてなブックマークに追加

バロックが好きな人は時代を下るよりも遡ると楽しいと思う。

ルネッサンス、アルス・ノーヴァと遡ると最終的にはアルス・アンティーカ、ノートルダム学派のペロティヌスとレオニヌス、あるいはヒルデガルト・フォン・ビンゲンあたりに行きつく。いまいちこの時代背景が分からないので、この本を読んでみた。

中世の音楽は強く古代の哲人の精神に影響されていたらしい。ことに ボエティウス(480-524か525)の『音楽教程 (De institutione musica) 』はプラトンやピタゴラス、プトレマイオスの思想を中世にもたらした。古代のハルモニア論に思想的な背景を与えられつつ、大学や修道院の発達とともに中世のポリフォニーは始まった。

ノートルダム大聖堂の上位の僧侶である レオニヌス が、アルベルトゥス の主唱にほとんどアドリブで対唱をつけていたらしい。アルベルトゥスはスペインはサンチャゴ・デ・コンポステラに残る『カリクスティヌス手写本』に「共に喜べ、カトリック信者たちよ (Congaudent catholici」を残したあのアルベルトゥスである。パリとサンチャゴ・デ・コンポステラは巡礼路でつながっており、この道を通って文化も移動したようだ。

中世西欧のある種の自由さと国境の存在しない活動の広がりを垣間見た気がした。