2007-06-19

誰かの息が「私」を呼吸させる

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あまり人のブログとりあげて云々することはしない予定だったのだが、偶然、
「今吸った息は、誰のものだろう。今吐いた息は誰のものだろう」。(404 Blog Not Found - ここは誰?私はどこまで?
という言葉が目に入った。

まあ、dankogaiさんと同じ感覚かどうかというと違うんだろうけど、これ、よく思う。特に静かに坐っている時、読書やギターに没頭している時。ふと気がつくと、自分が呼吸をしていたり、呼吸をしていなかったりするのである。

まあ、呼吸をしていない時、驚くのは理解してもらえると思う。呼吸をしていないのである、自分が。それがいつからかは分からない。ただ、自然に息をしていないのである。何か、自分が死んだような気さえする程、静かに自分が没頭しているのである。

一方で、呼吸をしているのも驚くのである。いや、こっちの方が息をしていないのに気づくより驚く。ただ、身体が膨らみ、しぼんでいる。自分の意図と関係なく、この身体というやつは動いている。そして息が入り、出てゆく。いや、空気が入り、出てゆくから、自分の身体が膨らんだり、しぼんだりしているのかもしれない……、そう思うほど、確実に空気が動き、身体が動く -- 自分の意志の制御の外で。

この感覚、うまく言えない。ただ空気、呼吸があり、あとはただ広い空間があり、「自分」などという膜は……そう「膜」なのだ、自分が。その広い空間の空気の中で、「呼吸」をしている膜なのだ。だから
ここは誰?私はどこまで?
になるんだろう。

いや、膜でもないか……。うーん。ただ、広がり、消えていることだけとしか言えないなあ。誰か大きな存在の中にいて、その大きな存在の呼吸が全てであって、俺の息ってのは、そのプロセスの一部っていうのかな。それが「ここは?」なのである。「ここは、誰?」

ただ考えて欲しい。「自分」の身体が「動いて」空気が入っているんじゃなくて、空気という「外部」が動いていて、その動きの中で「自分」の「身体」が動いているんじゃないと、断言できるだろうか?

いや、そして、その空気が「自分」なんじゃないか? そう思う瞬間があるんじゃないだろうか?

ねーか。ねーわな。うん。ごめん。



あと、「誰の夢?」ってのも分かる。というか、基本的に俺は、自分ってのを感じない。

よく人に「えーと矢野君、それをやりたいのは何故かな? 自分のため? 人のため?」とか言われるんだけど、端的に自分のためではない。「自分? へ。そんなのねーよ」というのが実感だから。

かと言って人のためと言う気もしない。個人ができる「人のため」って何よ? とか思うわけで。だから、こういう質問されると困る訳で、アホみたいに答えるハメになり、んで、逆に俺は「あーあ、このオッサン、この程度のことしか訊けねーかね」とか思うから、サイアク。

俺は続き物の悪夢をよく見る。最近は見ないが、よく見た。

中三の時は三ヶ月に渡って続き物の悪夢が続いた。ビルを逃げ回って、友人を美人の悪魔に売りながら、コソコソと生き伸び、最後の友人を売り渡したら、屋上から飛び降りるという夢だった。最初は沢山の人がつまっていたビルが最後には俺だけになった。そういう夢だった。

その後は落ちる夢を一カ月は見た。ただ、俺は落ち続けた。ビルは砂漠にポツリと建っていて、ガラスが太陽を反射し続けた。ビルの中には、俺が美人の悪魔に売り渡した筈の人々が何気なく暮らしていた。ただ、それが落ちる俺からは妙に非現実に見えたし、機械じかけの人形にしか見えなかった。

そんな夢を見ながら生きていると(しかも、俺は夜だけじゃなく白昼夢も幻覚もよく見るので)、生きることのリアリティーが急速に薄れてしまう。

こんな夢もあった。夢の中で俺は寝ている。すると玄関に人が来たので俺は玄関に行く。そこには美人の悪魔がいる。俺は、その悪魔に魅惑され、中に入れ、恐ろしい思いをして、結局、殺される。

すると夢が醒めて、自分は布団の中にいるのに気がつく。そうすると再び玄関のノックが聞こえる。そして……。とエンドレスに思える循環をする。たまに、俺はそうした夢の中に自分がいるような気がしてならないし(今もそうだ)、そして、その夢が
誰の夢なんだろう
と素朴に思ってしまうのだ。

どう考えても、その夢や想念というのが自分のものな気がしない。いや、そもそも「自分」が稀薄だ。だから、誰かの夢の中を、今も俺は生きているという気がする。

病気?

だろうな。たぶん。でもね、俺はそんな自分の人生しか歩んでないのよ。

だから、「健全」な人は、理解できなくておーけ。むしろ、無理に俺を理解しようとなんてすると、ケガするだけだと思う。

でもね、これだけは意味不明に書いておくけど、息しかないんだよ。最後には。自分ってのは呼吸だけでしかないんだ。呼吸ってのは、まさに魂なんだ。そして、その魂というのは、もっと大きなプロセス、もっと大きな空気の息吹の中でしか感じられないものなんだよ。

ふむ。よし。さてと。風呂でも入るかな。