2008-01-15

[CD] Karl Richter - Bach Sacred Masterpieces (10 CD)

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Bach: Sacred Masterpieces

いい物を買った。カール・リヒターによるマタイ受難曲、ヨハネ受難曲、クリスマス・オラトリオ、マフィニカト、ロ短調ミサがセットになったCD10枚組みのボックス・セットである。

マタイ受難曲は定番とも言われる58年録音。「CDジャーナル」データベースによれば

リヒター31歳の,極限までぜい肉をそぎ落とした迫真の名演。
まさしくそのとおりと思う。厳しい緊張感から湧き上がる、張りと深みのある音の圧力があなたを圧倒するだろう。

まずマタイを聞くなら、このリヒター58年録音のマタイを聞いてほしいと思う。それも聞き流すようなのではなく、対訳を見ながら歌詞も読み取ってほしい。更に新約聖書を紐解いてみよう。

マタイ受難は、新約聖書「マタイによる福音書」の26、27章のイエスの受難を扱っている。構成としては2部からなり、第一部はイエスの捕縛まで、第二部はイエスの捕縛、裁判、十字架への磔、墓の封印までを扱う。

その中でも中心は「ペテロの否認」である。かいつまんでおくと、イエスが最後の晩餐の席で、弟子たちに自分の「十字架に磔にされる」という運命を語る。そして弟子はみながイエスを知らないといって逃げることも予言する。中でもペテロは強く自分はイエスを助けると主張するのだが、イエスは「鶏が鳴く前に三回、私を知らないという」と予言する。実際にイエスがユダの裏切りにより捕縛されると、弟子たちは逃げるのに精一杯になる。ペテロもその一人であり、人々が「お前はイエスと一緒にいた」と言われると、「そんなことはない。私はあんな男は知らない」と言ってしまう。そして、ペテロが三度目の否認をしたとき、鶏が鳴き、ペテロはイエスの言葉を思い出し、外に出て泣くという話である。こういう「裏切り」についておもうのにもマタイは有益な題材となる。まあ、こういう話題は別の機会に。

ちなみに、リヒターの58年録音のマタイは日本版で普通に買うと五千円以上する(もちろん、ヨハネクリスマス・オラトリオも、それぞれ五千円くらいする)。もちろん翻訳の歌詞などがついてくるので価値はあるのだが、このボックスがいかに「安い」かが分かることと思う。

バッハ: マタイ受難曲
日本盤のマタイ受難。五千円以上する。

次のヨハネ受難曲は64年録音である。amazonにあるレビューによれば、リヒターによるヨハネ受難曲はこの録音しかないらしい。マタイよりも「個人的には」ヨハネを好むという人も多い。

クリスマスオラトリオは65年録音。これは普通に売っているの同じで、高校の図書館にもこの録音のLPが入っていた。聴いたことないが55年録音もあるらしい。それとマニフィカトは61年録音。

最後にミサ曲ロ短調は69年5月9日東京でのライヴ録音(日本の盤)。うちには61年録音のものがあった。それと比べると、ライブのためか勢いと迫力のある演奏。ただ、私の好みから言えば61年録音の方が静かで厳しい演奏なので好み。

以上、だらだらと書いたが、こうした演奏がとても安く聴ける。今なら中古で4500円でも手に入る。すごいことだと思う。本当に勝手なことを言うが、折角これだけ便利な環境に生まれたのだから、バッハのマタイやドストのカラマーゾフくらいは絶対に押さえておいたほうが良いと思う。その深さはハンパじゃない。本気で、一生楽しめるはずだ。

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