2008-02-28

ノートの取り方(3) 余白を取る

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ノートの取り方(2) 8つのルールについて、一つずつ書いてみる。今回は「余白」について。

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ノート術やノート作成法などを読むと必ず余白を十分に取るように書かれている。これは後からの書き込みをするために必要不可欠だからだ。

一般にノートは「書いたら終わり」という人が多い気がする。そうじゃない。ノートは書いた後が勝負だ。一度書いただけで記憶に残るのなら、ノートなんて書く必要がない。僕たちは何かをしたいから、そしてその何かが成し遂げられていないから、ノートに何かを書くのだろう。

ノートが作られる瞬間は不完全な場合が多い。ノートには勢いで書く。だから、後から読んだら意味が通じなかったり表現が適切でなかったりする。それでいい。最初から完璧に書こうとすると上手くいかない。自由に書くから、アイディアや知識が湧きやすい。

余白なしで文書を書いてしまうと、そうした不完全な文書を直すスペースが無い。場合によっては書き直したり、まとめたりしたくなるだろう。そのスペースが必要だ。別の紙に書いてしまったら、最初の勢いのある文字は葬られてしまう。最初の勢いと、しっかりと意味の通じる図や文を共存させることができない。

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余白が必要なのは、修正やまとめのためだけではない。余白がないと追記やコメントができない。一つの項目について重層的にアイディアを重ねることができない。

人間は情報が豊富なときに記憶ができると僕は考えている。情報の網の目が広いほうが想起しやすい。自分の経験に基づいたアイディアや知識の方が様々な連想を広げてくれるので、身体化しやすい。

実は重要なのは結論ではない。「あの時に思ったことだ」「あの人の言葉だったから」「あの場所で感じたことだ」……。そういうことが、僕たちの思念をコントロールする。芸術的な文藝を除けば、一般に文字の情報は些細なもので、現実の体験の情報量には到底かなわない。だから、少しでも情報量は多く残しておいて、連想の網の目を広くしておいたほうが想起しやすい。

手書きのノートはこの点において強みがある。最初に書かれた状況や勢いが記録されやすい。その筆跡が、その汚れが、僕たちの思い出の回路に繋がってゆく。次回にも書くことだが、だから日付や場所などを併記する必要もここにある。連想の網の目を広げられること、自分の体験との密接な関連を残せることに手書きの強みがある。

余白を残すことで、一つの空間に重層的に情報を蓄積できる。書き込まれたそのときの状況も、そこに重なってゆく。その折々の自分の思念が一つのアイディアに織り込まれてゆく。知識やアイディアが身体化してゆく。

思いを重ねるために余白はなくてはならない。

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僕はノートの片面しか使っていない。見開きの右側しか使っていない。「もったいない」と言われるかもしれない。でも、一つの見開きには一つの項目しかないほうが、僕にはストレスが少ない。あることを考えているのに、他のものが目に入ってしまうと気が散ってしまう。

右側しか使わない理由はもう一つある。破り取るためだ。あるテーマについて複数ページに渡っていると書きにくくて仕方がない。そういう時は破って並べてしまう。もし、裏面に何か書いてあったら破ることができなくなる。もちろんコピーすればいいのかもしれないが、破る方が早い。

文を一行おきに書く人もいるが、僕は一つの段落は行をあけずに書いて、段落ごとに二行ほど余白を取るようにしている。一般的なウェブサイトの表示に似ている。段落を把握しやすいことを僕は好む。

僕は一行を短く抑えて、右に余白を取るようにしている。ここがコメントや追記を書くスペースだ。左右に小さな段落が並ぶことになる。いくつかの段落は囲まれて、矢印が引かれたりもする。見た目は、文とチャートの中間になる。四色ゲルインクのボールペンを使っているので色もつけている。

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余白とは関係ないけど、使っているノートのタイプもメモしておく。僕が使っているのは、厚めのA5かB5のリングノート。A4は僕には大きすぎた。まあ、慣れの問題だろうけど。更にポケットに入るメモ帳として100円ショップで買ったB7の方眼罫も利用している。これは本当に一時的なメモ用。

僕は右側にしか書かないので、折り返して使えるリングノートを好んでいる。電車内やカフェで開くには見開きはストレスがある。折り返せるノートなら気にならずに集中できる。通常のノートだと、折り返すと真中が膨らんで書きにくい。それに机の上に開いたままにしておく際にも省スペースだ。

そうそう。以前、モレスキンを折り返して使っていたら壊れてしまった。あれは別に頑丈ではないと思う。

そうしたノートの先頭の見開きはTODOを書くスペースとして空けていて、最後のページは目次にしている。表紙には、通し番号と使った日付を書いている。タイトルがないのもあれなので「雑記帳」と書いている。あまりいいネーミングじゃないけど。

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以上、余白について思うところを書いた。まとめると、余白は以下の理由で必要だということ。

  • 余白は自由に書いた文書を後から読めるように修正するため
  • 重層的にアイディアを重ねるべく追記のため

そして僕の使用法には以下の特徴があることを述べた。

  • 見開きの右側にしか書かない
  • 一行を短くして余白を右側に取っている

次回はページ番号をふり、日付入れることについて書いてみる。