2008-08-02

知的生産のプロセス 何が自分にしかできないか

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まあ、こんなことばかり書いていても仕方ないのですが……。思い付いたので書いてしまいました。誰かの役に立てばありがたいです。情報と向きあうときに気をつけること は本当に自分に向けての注意です。

3時間でレポートを作成する方法 では以下の手順を推奨した。

  1. 参考文献を読み漁り、ネタをカード化 (一時間以上)
  2. カードを机の上に並べ、アウトライン作成 (三十分前後)
  3. カードをもとにして本論を書く (一時間前後)

ただし、文献が決まっていない場合は更に時間がかかるとも注記した。これらもあわせて、プロセスを書くと以下のようになると思う。

  1. 収集: 情報を収集する。ゴミがあってもかまわない。
  2. 選別: 集めた情報からゴミを排除する。
  3. 理解: 選別された情報を分析してゆく。
  4. 記憶: 理解内容を記憶する。カードなどで記憶を外部化し、その外部化した記憶の操作によってもよいかもしれない。
  5. 閃く: 記憶や外部化した記憶の操作を通じ、アイディアが湧く。
  6. 原型作り: アウトラインやプロトタイプなどアイディアの表現の骨となるものを作成する。信頼できる協力者がいる場合には、簡単なメモでも伝達できるのかもしれない。
  7. 作成: 実際に作成してゆく。

プロセスの混同は効率的ではない。だからプロセスに意識的であることが重要だ (この点については 「整理」のための6つのルール の 6 節を参照。整理や学習も似たようなプロセスになっているのだと思う)。

また、執筆については コンピュータ上での執筆時に、気が散って書けなくなるのを防ぐために を参照。問題設定がまだの場合には、性格が違うが 問題解決の技術 が役に立つかもしれない。

大切なのは「理解」「記憶」「閃き」「原型作り」だけ

上のリストを眺めると、「収集」と「選別」は信頼できる他人に任せられることに気づく。これは、ある意味では事務的な作業だからだ。また、執筆そのものでさえ、他の人に任せるなり共同作業にすることができる。勿論すべてを自分で行うのが本来だが。

つまり、純粋に自分しかできないことは「理解」「記憶」「閃く」「原型作り」の 4 つだけである。故にこの出来が全体の結果を決めるといってもよいと思う。

しかし、このプロセスは蔑ろにされがちであると思う。情報を収集をしたと思えば、それらをざーっと眺めつつ、即座に執筆に入ってしまうことが私は多かった。

その重要な 4 つのプロセスを効果的にするにはどうしたらよいか。

上に書いたようにプロセスに意識的になり、他のプロセスと混同しないことが大切なのだろうか。

実はそうではないと思う。一般に、表現することが記憶を補強し、記憶することが理解を補強すると私は考える (ノート法について書いたときにも、暗記よりも想起に注目すべきと書いた)。他の段階では、区別が重要だと思うが、この 4 つについては常に一つ先のプロセスを行いつつ循環するのがよさそうだ(ただし、閃きはプロセスという気がしないので記憶の段階に含めておく)。つまり、理解するときには記憶するように努めてゆき、記憶や閃きを待つときにはアウトラインやプロトタイプをイメージしながら行うということだ。

これは文書を書く必要がないような学習をする際にも有効だ。つまり、学習の際にも敢えて論文や自分が授業を行うなどの何等かのアウトプットをイメージをして学習すると効果的かもしれない。これは資格のためだけではなく、特定の分野のスキルや知識を付けたい場合にも有効だと思う。繰り返しになるが、理解するために記憶しつつ、記憶するために架空の論文や授業のアウトラインを作成してゆくのだ。こうして理解と記憶、発想力がつくのではないかと思う。