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所謂「金融危機」の報道が喧しいためか、このところ恋人が金融に興味を持っている。本日は「信用創造」について説明した。
まず、信用創造 - Wikipedia を印刷して渡した。そして、以下の文書を図にして説明した。
たとえば100万円の現金が預金されたものとする。準備率が10%であれば、この100万円の現金を日銀当座預金に回した上、借り手の口座に預金 900万円を創設することにより、900万円を融資することができる。この結果、預金額は1000万円となる。
「銀行は100万円の預金で900万円融資できる」と言うと、彼女は非常に驚いた様子だった。
「で、現実には準備率ってのは現実的には 1% 切ってるくらいだから銀行ってのは100倍以上の預金を創設できるんだよ。だから100万円あれば9000万円貸せるんだね。いまは逆に信用収縮だから貸さないけど、本気になれば無限に貸せるようなもんだ」
彼女はぽかーんとして、その後「そんな馬鹿な!」と言う。「無いお金を銀行は貸せるの? そんなの詐欺じゃん! BSはどうなるの?」
尚、バランスシートの上では、負債の側では預金された現金100万円+創設された預金900万円、資産の側では日銀当座預金100万円+融資残高900万円となる。
「貸し出しても返済されると考えるから、全てのお金を準備する必要はないと考えるんだ。逆に言えば返済が滞ると信用が失われて金融危機になるんだけど……。ここを読んでみて」
このようなプロセスで発生した信用貨幣の価値は、期限に借り手が遅滞なく返済や利子支払いをおこなうことを前提としており、恒常的な業績不振などにより借り手側の信用が急速に失われたり、経理上の不具合で十分な担保価値や引当金が計上されていないことなどが判明すれば信用不安が生じる。これが金融機関の健全性や預金の支払能力に対する不安にまで波及したとき、大規模な金融危機が発生する。新たな借入よりも返済が多くなったり、信用創造が収縮すると経済全体の取引が低調となる(いわゆる不況)。
「更に、一度に引き出しが殺到しないものとも考えているんだ。だから、みんなが一気に預金をおろそうとすると銀行は破綻する。まあ、それを防ぐために、他の銀行が現金を融通するから実際に簡単には破綻しないだろうけどね。本当は預けた金を勝手に他のところに使っている(運用している)のは問題なのかもしれないけど、習慣上、問題ないことになっている」
預金者がその銀行の預金の安全性に疑問をもつと、預金の引出しが起こる。このとき銀行が、それを賄うような資金調達ができなくなれば、その銀行は破綻する(取り付け騒ぎ)。これは、そもそもの貸出・信用創造の前提に「統計的に一度に引き出しが殺到しない」ことがあるためで、この前提が崩れた場合、手持ちの資金では預金債務を償還できない。
彼女は「普通の」銀行や貨幣というものが,こうした「信用」の上に成立していることに驚いたらしい。また銀行によって信用が貸し出される瞬間に「創造」されるということにも驚いたらしい。案外、そういう人は多いかもしれないから、一応、記事にしてみた。
最後に、ハイパワードマネー(現金通貨と中央銀行預け金の合計。マネタリーベースとも呼ばれる。ハイパワードマネー - Wikipedia)とマネーサプライ(通貨の合計。マネーサプライ - Wikipedia)という用語を説明して、公定歩合とかオペの話をして、簡単なマクロ経済入門。更にBIS規制とかの話も少々。
彼女は、六本木ヒルズで財務を経験し、渋谷のアセット・マネジメントの会社で不動産リートに携わり、現在は丸の内の保険会社に勤務しているのだから、実務で言えば私より全然くわしいのだが、マクロ経済はほんとうに全然知らないようだ。